こんにちは、理学療法士の齋藤です。
最近街の接骨院や整体院などでよく「筋膜リリース」と書かれているのを見かけませんか?
筋膜って何? リリースってなんか気になるけど実際なにするの? 本当に効果あるの? 胡散臭くない?(・・?)
今日はそんな疑問に答えていきたいと思います。
筋膜とは?
筋膜とはその名の通り、筋肉を包んでいる膜です。
一般的に筋膜と言われるものは
筋内膜・筋周膜・筋外膜・深筋膜・浅筋膜
の5種類になります。
筋内膜:太さ20〜100μmくらいの筋繊維を1本1本包んでいる膜
筋周膜:いくつかの筋繊維を束にして包んでいる膜(これを筋束という)
筋外膜:いくつかの筋束をまとめて、1つの筋肉として囲んでいる膜
深筋膜:いくつかの筋や骨をひとまとめに包んでいる膜
浅筋膜:いわいる皮下組織と言われるもので、深筋膜のさらに外を包んでいる。浅筋膜の中には脂肪や神経・血管・リンパ管がはしっている。
深くから
筋内膜<筋周膜<筋外膜<深筋膜<浅筋膜
という順番に筋肉を包んでいます。
では筋膜リリースは、どこの筋膜に対してアプローチをしているのでしょうか?
実は一般的に言われる『筋膜』と
筋膜リリースで言われるところの『筋膜』は若干ニュアンスが違います。
アナトミー・トレインでは、筋膜についてこの様に記載しています。
全身に及ぶ結合組織の複合体を「筋膜」または筋膜網と呼ぶ。
医学において「筋膜」という用語は狭義の意味で個々の筋を覆う、あるいは囲む大きなシート様の織物と一般的に解釈されているが、我々はもっと全般的な意味で使用する。2016.アナトミー・トレイン 徒手運動療法のための筋筋膜経線 第3版 Thomas W.Myers
つまり筋膜リリースでの『筋膜』は上で説明した5つだけでなく、腱や靭帯・関節包・臓器包などを含みます。
この違いは英語にすると分かりやすく
一般的な筋膜は『myofascial』
筋膜リリースでの筋膜は『fascial』
となり『fascial』は筋膜というより、結合組織という意味合いが強くなります。
たまにこの違いを曖昧に説明している記事もあるので、ややこしくなりますね( ;∀;)
このfascialは全身に張り巡らされており、『第2の骨格』とも呼ばれるほど重要な役割を担っています。
筋膜リリースとは
筋膜は、捻挫や外傷・骨折、または慢性的な不良姿勢や生活習慣、精神的な緊張や落ち込みなどで変性を起こすことがあります。
筋膜は全身に張り巡らされているため身体のどこかで筋膜変性が起こると、変性が起きた場所以外でも痛みや不調が発生することになります。
また筋膜には血管や神経・リンパ管なども走っているので、これらに対する不調や内臓への影響も少なからず出てくる可能性があります。
また筋膜は可塑性です。
したがって、筋膜は一度変性するとなかなか元に戻らず、ストレッチやリラクゼーションなどで筋肉だけにアプローチしてもまた身体が元の硬さに戻ってしまうことになります。
可塑性(かそせい)とは、力を加えたときに変形させることができ、その後力を加え続けなくても元の形に戻らない性質のことを言います。
この変性した筋膜の歪みや癒着を元のいい状態に戻し、身体の不調を取り除くことを目的とした徒手療法を筋膜リリースと言います。
筋膜リリースの効果
筋膜リリースに関しては、ストレッチングなどと比較して可動域の改善と持続に効果が高いという研究結果があります。
これは筋膜が可塑性であるため、一度いい状態に戻してしまえばその状態が継続してくれるということです。
したがって、今までリラクゼーションやストレッチをしてもすぐにまた痛くなっていた『肩こり』や『腰痛』をしっかりと改善できる可能性が高いということになります。
そのため筋膜リリースは、疼痛や関節可動域の改善・また緊張性頭痛などに大きな効果が期待できます。
しかし、筋膜リリースを行なってはいけない場合もあるので注意が必要です。
下に筋膜リリースの適応と禁忌を記載していますので、自分が当てはまるか確認してみてください!!
適応 | ・急性、慢性疼痛 ・可動域制限 ・姿勢アライメント不良 ・神経機能異常 ・スポーツ障害 ・頭痛 ・顎関節機能異常etc.. |
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禁忌 | ・悪性腫瘍、癌 ・開放創 ・縫合部 ・感染症 ・発熱時 ・血腫 ・急性期の循環不全 ・動脈瘤etc… |
傷がある部分や循環が良くなることで悪化の恐れがある場合は、筋膜リリースの適応外になりますので注意してください。
まとめ
筋膜と筋膜リリースのことについて、少しは参考になったのではないかなと思います。
下に今日のポイントをまとめてみました。
・筋膜は全身に張り巡らされた結合組織
・筋膜リリースは、ストレッチングやリラクゼーションより効果が持続する
しかし、筋膜リリースには課題も残っています。
それは研究が少なく、エビデンスの確立に至っていない点です。
したがって、治療院などで筋膜リリースを受ける際はしっかりと信用できるのかを見極める様にしてください( ;∀;)
参考文献
アナトミー・トレイン 徒手運動療法のための筋筋膜経線 第3版. 著者:Thomas W.Myers 発行:株式会社 医学書院
解剖学. 監修:渡辺 正仁 発行:株式会社 廣川書店
標準理学療法学 物理療法学 第4版.監修:奈良 勲 発行:株式会社 医学書院