心疾患の既往がある患者さんに対するリハビリにおいて、何を指標に負荷量を調整していますか?
今回は介入中の自覚・他覚所見だけでなく、データから見る心負荷について説明していこうと思います。
BNPとは?
みなさん、BNPという単語は聞いたことがありますか?
始めに、BNP(脳性ナトリウム利尿ペプチド)について簡単に説明します。
BNPは、心室から血液中に分泌されるホルモンです。強力な水・ナトリウム利尿作用、血管拡張作用を有し、心室に負荷がかかると分泌されます。交感神経およびレニン~アンジオテンシン系を抑制して、それらのホルモンと拮抗的に働いて心不全などの病態を改善させる作用があります。
引用:看護に役立つ検査辞典 著 野中廣志
要するに、心室へ負担がかかればかかる程BNPが分泌され、心臓への負担を軽減させようとする、ということです。
したがってBNPが高値の場合は心不全を疑い、運動負荷量などに注意をしなければなりません。
BNPと心不全の関係
前述したように、BNPの数値が高いほど心臓に負荷がかかっていると判断できます。
その為、心筋梗塞や心不全の診断、予後判定にも有用です。
以下はBNPの数値と心不全の基準値を表しています。
BNP(pg/mL)
20≧ 正常群 :心疾患系に問題なし
40≧ 高リスク群 :心不全の可能性は低い
100≧ 無症候群 :心不全の可能性がわずかにある
200≧ 無症候群 :心不全の可能性がある
200< 有症候群 :心不全の可能性が高い
一般的にBNPが100pg/mLを越えると心不全と診断され、治療が必要になる場合が多いです。
リハビリとBNP
最低限のリスク管理として、リハビリ中はバイタル変動の有無、息切れの出現、モニター波形の変化等を確認していると思います。
その場では問題が無いと判断していても、実際に心臓への負荷量が正しいのか確認する事が重要です。なぜなら、連続的なリハビリによって負荷が蓄積してしまう可能性があるからです。
その際に血液検査でのBNPの数値も有力な手掛かりになります。
心不全や心筋梗塞の評価基準としても使用されているBNPですが、リハビリにおいては、前回検査時のデータと比較し、数値が上昇していないかを確認する事も必要です。
具体的には前回と比較し100pg/mL以上の上昇は、過度の運動負荷が示唆されます。
したがってBNPが140pg /mL程度であったとしても、前回が40pg/mLであった場合には運動負荷量を検討しなければいけません。
逆にBNPが250pg/mLであっても、前回と比較して数値が上昇していなければ、運動負荷量としては適切ということになります。(※その他身体所見や自覚症状による)
まとめ
今回は、BNPについて説明させて頂きました。
ポイントは以下の3つになります。
・BNPは心室へ負担がかかると分泌され、心臓への負担を軽減させようとする。
・BNPの数値が高いほど心臓に負荷がかかっている。
・前回検査時のデータと比較し、リハビリを行ったことによってその後のBNPが著しく上昇していないか(100pg/mL以上)を確認する。
心疾患に対するリハビリは難しいですが、ぜひ参考にしてみて下さい。
では、また別の記事で…
参考文献
看護に役立つ検査辞典 著者名:野中廣志 発行所:照林社
野原隆司(2012).心血管疾患におけるリハビリテーションに関するガイドライン